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憲剛の最新本を立ち読み!「史上最高の中村憲剛」(8/20)

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 川崎フロンターレのMF中村憲剛の南アフリカW杯から現在までの5年半を描いた『残心』(飯尾篤史著、講談社刊)が4月16日に発売となった。発刊を記念しゲキサカ読者だけに書籍の一部を公開! 発売日から20日間、毎朝7時30分に掲載していく。

コンフェデレーションズカップ、開戦<下>

 コンフェデレーションズカップは各大陸の王者、ワールドカップ王者、開催国によって争われる代表チームの国際大会で、ワールドカップの前年に本大会のホスト国で開催される。

 アフリカ王者のナイジェリア、北中米王者のメキシコ、南米王者のウルグアイ、オセアニア王者のタヒチ、ヨーロッパ選手権準優勝のイタリア、ワールドカップ王者にしてヨーロッパ王者でもあるスペイン……。

 アジア王者として出場する日本は、開催国のブラジルとの開幕戦に登場した。

 ブラジルの首都、ブラジリアのナショナルスタジアムは、カナリア色のユニホームやシャツをまとった約6万7000人の大観衆によって埋め尽くされていた。

 前年2012年10月の対戦では0-4と大敗したが、厳しいプレスをかいくぐり、パスをつないでブラジル陣内に攻め込んだという事実が、日本の選手たちの自信となっていた。

「点差ほど差があったとは思わない」

 試合後、大敗したばかりとは思えぬ、自信に満ちた表情で本田圭佑は語ったものだった。

 それから8ヵ月、ブラジルとの差をどれぐらい縮めることができたのか――。

 対戦前日の取材エリアでも「すごく楽しみ」といった選手たちの声が聞かれた。

 ところが、日本のささやかな希望は、ブラジルの若きエースによって、あっという間に打ち砕かれた。

 前半3分、左サイドのマルセロの、矢のようなクロスをフレッジが胸で落とすと、ペナルティエリアの外からネイマールがボレーシュートを豪快に叩き込み、ブラジルが先制する。

 前回の対戦では開始12分で先制されたため、日本の選手たちは慎重すぎるほど慎重に試合に入ったはずだった。それなのに、最も警戒していた男に決められてしまった。

 計り知れない精神的ダメージを受けた日本は、その後、まったくチャンスを作れないまま前半を終えた。反撃を誓ったはずの後半早々にも2点目を奪われ、主導権を掴み損ねると、終了間際にもカウンターから3点目を許し、とどめを刺された。

「開始早々の1点目がすべてでしたね」

 出場機会を得られなかった中村は、改めてブラジルの試合運びのうまさ、個人戦術の高さに舌を巻いていた。

「あれで日本は苦しくなったし、ブラジルには余裕が生まれた。実際、ブラジルは無理をせず、のらりくらりしながら、勝負の分かれ目を嗅ぎ分けて後半の立ち上がりに2点目を奪った。彼らはゆっくりプレーするときと、素早くプレーするときのメリハリがあって、使い分けがすごく洗練されている。ここぞ、というときのパワーの出し方は見事としか言いようがない」

 日本が消極的なプレーに甘んじたのは、強行日程とコンディションの問題があったが、そうした悪条件を考慮したとしても、何もやらせてもらえなかった。

 0-3というスコアだけを見れば、前回対戦よりも縮まった。しかし、内容を見れば、差はむしろ広がったように感じられた。

(つづく)


<書籍概要>

■書名:残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日
■著者:飯尾篤史
■発行日:2016年4月16日(土)
■版型:四六判・324ページ
■価格:1500円(税別)
■発行元:講談社
■購入はこちら

▼これまでの作品は、コチラ!!
○第7回 コンフェデレーションズカップ、開戦<上>

○第6回 妻からの鋭い指摘<下>

○第5回 妻からの鋭い指摘<上>

○第4回 浴びせられた厳しい質問<下>

○第3回 浴びせられた厳しい質問<上>

○第2回 待望のストライカー、加入<下>

○第1回 待望のストライカー、加入<上>

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